精神保健福祉士(PSW)として働いていると、「もう少し職域を広げたい」「転職で選べる求人を増やしたい」「評価される武器が欲しい」と感じることがあります。
そこで候補に上がりやすいのがダブルライセンスですが、資格を増やせば必ず得をするわけではありません。使う場がない組み合わせだと、時間とお金をかけたのに役割が変わらず、モチベーションだけが削られることもあります。
この記事では、ダブルライセンスを年収アップの魔法ではなく、配置と担当領域を変えるための道具として整理します。
このページでわかること
- 精神保健福祉士のダブルライセンスで変わること(職域・役割・働き方)
- PSWと相性が良い資格の候補と、向く職場・向かない職場の考え方
- 年収が伸びるかどうかを、資格ではなく職場条件で判断する視点
精神保健福祉士とのダブルライセンスで変わること

精神保健福祉士のダブルライセンスは、「知識が増える」だけでなく、担当できる領域や求人の土俵を変える効果が出ると強いです。
一方で、資格を増やしても配置や役割が変わらない職場だと、働き方も年収も動かず、投資回収が難しくなります。
職域が広がる
ダブルライセンスのいちばん分かりやすいメリットは、応募できる求人の幅が広がり、「担当できる仕事の種類」が増えることです。PSW単体だと精神科医療や精神障害の地域支援が中心になりやすいですが、掛け合わせ次第で、介護、就労、心理、企業、行政寄りの仕事にも入りやすくなります。
職域の広がり方をイメージしやすいように、組み合わせ別に整理します。
| 掛け合わせ | 広がりやすい領域 | 活きやすい職場例 |
|---|---|---|
| PSW+社会福祉士 | 制度運用、生活課題、他領域連携 | 総合病院、地域包括系、行政委託の相談窓口 |
| PSW+ケアマネ | 介護保険、在宅、家族支援 | 居宅介護支援事業所、在宅系サービス、地域連携 |
| PSW+公認心理師 | 心理面接、アセスメント、チーム支援 | 精神科、児童思春期、カウンセリング併設機関 |
| PSW+キャリアコンサルタント | 就労支援、復職、企業連携 | 就労移行、リワーク、障害者雇用支援 |
| PSW+医療系(看護師・OTなど) | 医療行為・リハ、医療チームでの裁量 | 病院、訪問看護、精神科デイケア |
大事なのは、資格を足すこと自体よりも、応募できる求人の必須条件を満たせるか、配置要件に入れるかという点です。
年収は職場次第
ダブルライセンスで年収が上がるかは、資格よりも職場の賃金テーブルと役割で決まります。同じ資格でも、手当がほとんど付かない法人もあれば、役職要件や配置要件に絡んで評価される法人もあります。だから、年収アップ狙いで資格を増やすと、期待外れになりやすいです。
むしろ現実的なのは、年収が動く条件を分解して、資格がどこに効くのかを見ることです。整理すると、年収が変わる要因はだいたい次の3つに収まります。
- 賃金テーブル
↳同じ仕事内容でも、法人や自治体で基本給レンジが違う - 役割・役職
↳主任や係長など、マネジメントや調整の比重が上がると土台が動きやすい - 手当と配置要件
↳資格手当、配置基準、加算要件に絡むと評価されやすい職場がある
ここでのコツは、資格を「給料を上げる札」ではなく、「役割を変えるための通行証」として扱うことです。
たとえば、ケアマネを取って在宅の土俵へ移る、キャリコンを取って就労・企業連携へ寄せる、社会福祉士を足して相談支援や制度側へ広げる。こうやって土俵が変わると、結果として年収レンジが動くことがあります。

PSW(精神保健福祉士)と相性が良い資格一覧

精神保健福祉士に掛け合わせる資格は、「何ができるようになるか」よりも「どの現場で、どんな役割を担いやすくなるか」で選ぶほうが失敗しにくいです。
社会福祉士
PSWに社会福祉士を足すと、精神領域の専門性を保ったまま、生活課題や制度側の相談まで守備範囲を広げやすくなります。
精神科だけで完結しないケースでは、住まい、経済、家族、福祉サービスの調整が絡みますが、社会福祉士の視点があると「制度を使って生活を整える」動きが強くなります。
総合病院や地域の相談窓口、幅広い属性を扱う事業所で評価されやすい反面、職場によっては資格が増えても役割が変わらず、手当もほぼ動かないことがあります。取った後に担当領域が変わるのか、相談件数や役割範囲が広がるのかを先に確認しておくのが安全です。

介護支援専門員(ケアマネ)
ケアマネは、在宅と介護保険の土俵に入るための強い資格です。
精神疾患がある方でも、高齢化や身体合併で介護保険の関わりが増える場面は多く、PSWの経験は家族支援や危機時の調整に活きます。居宅介護支援事業所や地域連携、在宅支援の仕事に寄せたい人には相性が良い一方、業務の中心はケアプラン作成や給付管理などの事務と調整になりやすく、想像より「書く仕事」が増えます。
対人支援の手触りを残したい人は、担当件数や記録負担、休日の取りやすさまで現実ベースで確認して選ぶのが大切です。

公認心理師
公認心理師は、心理面接や心理アセスメントの枠を持つことで、医療や相談の現場での役割を広げやすい資格です。
PSWが担う制度調整や生活支援と、心理職が担う面接や評価は補完関係にあるため、チーム内での立ち位置を増やしたい人には魅力があります。ただし、現場によっては職種分業が明確で、資格を取っても心理面接を任されない場合があります。
また、学費や実習負担が重くなりやすいので、取得前に「自分がやりたい心理業務が、その職場で任されるか」「その業務が評価や配置に結びつくか」を確認してから動くのが現実的です。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、就労支援や復職支援、企業連携の領域に寄せたいPSWにとって、仕事の言語がそろいやすい資格です。
面談の枠組みや目標設定の考え方が整理され、支援を成果として説明しやすくなるため、就労移行、リワーク、障害者雇用の支援などで強みになります。いっぽうで、資格があるだけでは求人の必須条件を満たさないことも多く、実務では企業対応や提案、数字での報告が求められる場面も増えます。
面談スキルの強化だけでなく、職場が求める成果(定着、復職、就職の質)にどう貢献するかをセットで考えると、活かしやすくなります。
看護師
看護師は、医療職としての土俵に立てるため、役割と裁量が大きく変わりやすい資格です。
精神科では訪問看護や病棟、デイケアなど選択肢が多く、PSWとして培った生活視点や家族支援の経験は、医療の現場でも強く働きます。
ただし、取得までの期間と負担が大きく、働きながらの取得は計画性が必要です。また、資格が増えるほど「医療職としての期待」も上がるので、対人支援中心でいたいのか、医療チームの一員として手を動かす働き方に寄せたいのかを明確にして選ぶと後悔が減ります。
作業療法士
作業療法士は、生活行為や活動を通じて回復を支える専門職で、精神科領域でもデイケアや作業療法などの枠で活躍の場があります。
PSWの強みである退院支援や地域連携と、OTの強みであるリハビリや活動支援は相性が良く、入院から地域生活への移行を一体で見やすくなります。一方で、資格取得のハードルは高く、養成課程や実習の負担も重くなりがちです。
取得後にどの職場で働くのか、病院なのか地域なのか、精神科に寄せるのかを先に決めておくと、投資がブレにくくなります。
まとめ|精神保健福祉士のダブルライセンス
精神保健福祉士のダブルライセンスは、取ること自体がゴールになると失敗しやすいです。評価される場がない組み合わせだと、時間とお金を使ったのに役割が変わらず、仕事の負担だけが増えることもあります。
逆にうまくいく人は、資格を「年収を上げる札」ではなく「担当領域と応募先の土俵を変える通行証」として使っています。
判断の軸はシンプルで、次の3点を同時に満たすかどうかです。1つ目は、行きたい領域の求人で、その資格が必須または強い歓迎になっていること。2つ目は、取得後に配置や担当が変わる見込みがあること。3つ目は、実習や学費、勉強負担が現実的で、燃え尽きずに続けられることです。


