精神保健福祉士の国家試験は、他の福祉系資格と比べて合格率が高いことで知られています。しかし「合格率が高い=簡単な試験」ではなく、その背景には試験制度の設計・受験者層の特性・新カリキュラムの影響など複数の要因が絡み合っています。
この記事では、第28回(2026年2月実施)の最新合格率78.2%をはじめとするデータをもとに、精神保健福祉士の合格率が高く維持されている理由を多角的に解説します。
これから受験を検討している方の参考になれば幸いです。
この記事でわかること
- 第28回(2026年)最新の合格率・合格基準点
- 過去6年間の合格率推移と傾向
- 合格率が高い5つの理由(制度・受験者層・試験構造)
- 他の福祉系資格との難易度・合格率の比較
- 新カリキュラム(第27回〜)の変更点と影響
- 合格のための効率的な学習戦略
- よくある疑問(FAQ)
精神保健福祉士の合格率の現状と推移

2026年(第28回)精神保健福祉士国家試験の結果が、2026年3月3日(火)に厚生労働省より公表されました。
受験者数
7,107人
前回比 +465人
合格率(第28回)
78.2%
過去10年で最高水準
合格者数
5,558人
合格基準点:62点
第28回(2026年)試験概要
試験日:2026年1月31日(土)・2月1日(日) 合格発表:2026年3月3日(火)
試験地:北海道・宮城県・東京都・愛知県・大阪府・広島県・福岡県(7か所)
出題数:132問(専門科目48問+共通科目84問) 試験時間:230分
合格基準点:62点(132点満点)/正答率約47%(難易度補正あり)
合格率78.2%は、精神保健福祉士国家試験の過去10年間で最も高い水準となりました。
合格基準点62点は、満点132点の60%(79点)から大きく補正されており、第28回の試験問題が相当難化していたことを示しています。
過去6年間の合格率推移
| 回次 | 実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第23回 | 2021年2月 | 7,015人 | 4,267人 | 60.8% | 旧カリキュラム |
| 第24回 | 2022年2月 | 6,031人 | 3,994人 | 66.2% | 旧カリキュラム |
| 第25回 | 2023年2月 | 7,083人 | 5,139人 | 72.5% | 旧カリキュラム |
| 第26回 | 2024年2月 | 6,978人 | 4,911人 | 70.4% | 旧カリキュラム最終回 |
| 第27回 | 2025年2月 | 6,642人 | 4,694人 | 70.7% | 新カリキュラム初年度 |
| 第28回 | 2026年2月 | 7,107人 | 5,558人 | 78.2% | 新カリキュラム2年目・過去最高水準 |
第23回(2021年)の60.8%から、第28回(2026年)の78.2%まで着実に上昇しています。
特に新カリキュラム移行後(第27・28回)でも高い水準が維持されており、カリキュラム変更が合格率を大きく下げることにはなりませんでした。

精神保健福祉士試験の合格率が高い5つの理由
精神保健福祉士の合格率が高水準に維持されている背景には、単なる試験の難易度だけでなく、制度・受験者・学習環境の複合的な要因があります。
理由①:受験者全員が専門教育修了者
受験資格の取得には福祉系大学・養成施設の卒業または実務経験が必要。一定の基礎知識を持つ人のみが受験するため、母集団全体の学力水準が高い。
理由②:絶対評価制度で基準を超えれば全員合格
相対評価(競争)ではなく絶対評価を採用。総得点の60%程度を基準とした合格点を超えれば、何人合格してもよい仕組みのため、努力が直接結果に反映される。
理由③:社会福祉士W取得者の共通科目免除
すでに社会福祉士の資格を持つ受験者は共通科目(84問)が免除され、専門科目(48問)のみの受験が可能。この層の合格率は86%程度と非常に高く、全体の合格率を押し上げている。
理由④:出題範囲が精神保健分野に特化
社会福祉士が全福祉領域を広くカバーするのに対し、精神保健福祉士は精神医療・精神保健分野に特化。出題の焦点が絞られているため対策しやすい。
理由⑤:過去問の出題パターンが安定しており対策しやすい
精神保健福祉士試験は出題傾向が比較的安定しており、過去問演習が有効な資格として知られています。新カリキュラム2年目(第28回)では専門科目の難易度は基礎的な知識を問う出題が中心で、過去問をしっかり積み重ねれば対策しやすい状況が続いています。
「合格率が高い=誰でも受かる」ではない
合格率70〜78%という数字は、専門教育を修了した受験者の中での数字です。裏を返せば、専門機関で学んだ人の中でも20〜30%は不合格になっています。試験に向けた計画的な準備は必須です。
他の福祉系資格との合格率・難易度比較
| 資格 | 直近合格率 | 出題科目数 | 問題数 | 勉強時間目安 | 難易度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 精神保健福祉士 | 78.2%(第28回) | 18科目 | 132問 | 200〜250時間 | ★★★☆☆ |
| 介護福祉士 | 70.1%(第38回) | 11科目 | 125問 | 150〜200時間 | ★★☆☆☆ |
| 社会福祉士 | 60.7%(第38回) | 19科目 | 129問 | 約300時間 | ★★★★☆ |
| ケアマネジャー | 約21%前後 | 5分野 | 60問 | 200〜300時間 | ★★★★★ |
精神保健福祉士は福祉系3資格の中で最も合格率が高く、勉強時間の目安も社会福祉士より少ない傾向にあります。ただし科目数は18科目と多く、精神医療・精神保健分野の専門知識と社会福祉の共通知識の両方を習得する必要があります。
新カリキュラム(第27回〜)の変更点と試験への影響
2024年度(第27回)から精神保健福祉士国家試験のカリキュラムが改正され、試験の内容・問題数・科目構成が大きく変わりました。
| 項目 | 旧カリキュラム(〜第26回) | 新カリキュラム(第27回〜) |
|---|---|---|
| 総出題数 | 163問 | 132問 |
| 専門科目数 | 83問 | 48問 |
| 共通科目数 | 80問 | 84問 |
| 試験時間 | 280分 | 230分 |
| 新設科目 | なし | 「精神保健福祉の原理」 「刑事司法と福祉」 「地域福祉と包括的支援体制」を創設 |
| 再構築科目 | — | 「低所得者に対する支援と生活保護制度」 「保健医療サービス」を再編 |
新カリキュラムでの出題傾向(第27・28回)
- 共通科目は文章量の多い問題が増加。単なる暗記ではなく高い読解力と思考力が求められる
- 専門科目は基礎知識を問う出題が中心。過去問演習が引き続き有効
- 社会情勢の理解を前提に、複数の知識を関連づけて解く問題が増加
- 精神保健福祉士としての基本姿勢・地域包括ケアシステムの視点が重要
なお、過去に受験資格を得ている方(旧カリキュラム修了者)は、カリキュラム改正に関わらず引き続き受験できます。改めて新カリキュラムの実習を受け直す必要はありません。
精神保健福祉士の試験制度とその特徴

絶対評価と合格基準点の仕組み
| 評価方式 | 内容 |
|---|---|
| 絶対評価 | 他の受験者との競争ではなく、自分の得点が基準を超えれば合格。合格者数の上限なし。 |
| 合格基準点 | 総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で毎年補正。第28回は62点(132点満点)。 |
| 科目群足切り | 9科目群すべてで得点が必要。1科目群でも0点だと不合格(共通科目免除者は5科目群)。 |
科目群0点の足切りに注意
総得点が合格ラインを超えていても、9科目群のうち1つでも0点の科目群があると不合格になります。得意科目で稼いで苦手をカバーする戦術は通用しません。精神医学・法律系など苦手になりやすい科目も最低限の得点を確保する学習が必須です。
受験者層の特徴
| 受験資格ルート | 主な対象 | 合格率の傾向 |
|---|---|---|
| 保健福祉系大学等ルート | 4年制大学・大学院・4年制専門学校で指定科目履修者 | 平均水準 |
| 短期養成施設等ルート | 社会福祉士有資格者など(共通科目免除) | 約86%と最高水準 |
| 一般養成施設等ルート | 福祉系以外の大学卒業後に養成施設修了者 | 比較的低め |
合格者全体に占める女性の割合は約7割で、精神保健福祉士は女性が活躍しやすい分野といえます。
また41歳〜60歳のミドル世代の合格者が近年増加傾向にあり、社会人経験を持つ受験者が多いことも特徴です。

精神保健福祉士の合格率に関してよくある質問(FAQ)
社会福祉士と精神保健福祉士、どちらを先に取るべき?
一般的には社会福祉士を先取得するのが有利です。
社会福祉士取得後に精神保健福祉士を受験すると共通科目(84問)が免除され、専門科目48問のみの受験が可能。合格率が約86%まで高まるため、W取得を目指すなら社会福祉士→精神保健福祉士の順がおすすめです。
第28回の合格率78.2%は高すぎませんか?難易度は下がった?
合格率は上昇しましたが、合格基準点が62点(正答率約47%)と大きく補正されており、問題自体は難化していたことを示しています。
「合格率上昇=易化」ではなく、難易度補正の結果です。準備不足では合格できません。
独学でも合格できますか?
受験資格があれば独学での合格は十分可能です。
過去問演習を中心に200〜250時間の学習で合格した方も多くいます。ただし、新カリキュラムへの対応・法改正情報の収集が必要なため、テキストは毎年最新版(7〜8月発売)を使用してください。
働きながら取得できますか?
可能です。社会人の合格者も多く、通信講座や隙間時間の活用で取得している方がたくさんいます。
1日1〜2時間を半年〜1年間継続する計画を立て、試験7〜10か月前から準備を始めることをお勧めします。
新カリキュラム(第27回〜)に変わって難しくなりましたか?
問題数が163問→132問に減り、専門科目は基礎的な知識を問う出題が中心で過去問が有効です。一方、共通科目は文章量が増加し読解力が求められるようになりました。
旧カリキュラムとは試験の質が変わっているため、第27回以降の過去問を中心に対策することが重要です。
まとめ|精神保健福祉士は「努力が結果に直結する」狙い目の資格
第28回(2026年)の合格率78.2%は、精神保健福祉士国家試験の過去最高水準です。
この高い合格率の背景には、
- 専門教育修了者のみが受験する
- 絶対評価制度
- 社会福祉士資格者の共通科目免除
- 出題範囲の特化
- 過去問が有効な出題傾向
という5つの構造的要因があります。
ただし合格率が高くても、専門機関で学んだ受験者の中でも2割以上が不合格になっています。9科目群すべてでの得点が必要な「足切りルール」を意識し、苦手科目を作らない満遍なくな学習が合格の鍵です。
社会人・育児中でも通信講座や計画的な独学で合格している方が多く、200〜250時間の学習で十分狙える資格です。特に社会福祉士取得後に共通科目免除を活用すれば、より効率よく合格を目指せます。ぜひ自分の状況に合ったルートで挑戦してみてください。


