福祉用具専門相談員は、高齢者や障がい者の生活を支える重要な専門職です。しかし「どんな資格なのか?」「取得するには何が必要なのか?」といった疑問を抱えている方も少なくありません。
この記事では、福祉用具専門相談員の資格取得の具体的なステップから、実際の業務内容、そして将来のキャリアパスまでを丁寧に解説します。
講習内容や取得の難易度、費用、オンライン受講の可否といった実用的な情報に加え、独立してコンサルタントとして活動する選択肢など、他ではあまり触れられない情報も紹介しています。
このページでわかること
- 福祉用具専門相談員の資格取得に必要な講習とその受講方法
- 資格取得後に求められる主な業務内容と役割
- 実際に資格を取るための費用・期間・試験情報
- 福祉用具専門相談員としての多様なキャリアパスと働き方
- 独立や地域支援など、資格取得後の新たな可能性
福祉用具専門相談員とは?

【福祉用具専門相談員の基本データ】
就業者数 | 63,760人 |
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平均年収 | 394.3万円 |
平均年齢 | 41.2歳 |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト
福祉用具専門相談員とは、介護や福祉の現場で必要とされる福祉用具の選定や使用方法をアドバイスする専門職です。
高齢者や障がい者の方々が自立した生活を送れるように、最適な福祉用具を提案し、利用者やその家族、介護スタッフと連携しながら支援を行います。
福祉用具専門相談員の主な業務内容
実際の業務内容は、日々の訪問や相談対応など、多岐にわたります。現場での流れは以下のようになります。
- 利用者宅への訪問とヒアリング
↳身体状況や生活スタイルに関する聞き取り調査 - 必要な福祉用具の選定と説明
↳複数の選択肢から、最も適した用具を提案 - 福祉用具の導入・設置・調整
↳使用前に安全性と使いやすさを確認し、調整 - 導入後のフォローアップと点検
↳定期的に使用状況を確認し、適切なメンテナンスを実施 - ケアマネジャーや他職種との連携
↳情報共有を通じて、包括的な支援を実現
これらの業務は、単なるルーティンではなく、利用者一人ひとりに合わせた個別対応が求められます。そのため、柔軟な対応力と幅広い知識が不可欠です。

就業するまでの流れ
福祉用具専門相談員になるためには、都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する「福祉用具専門相談員指定講習」を受講する必要があります。
福祉用具専門相談員指定講習は、50時間のカリキュラムがあり、それらを修了する必要があります。ただし、
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 義肢装具士
上記士業の方々は講習を受けなくても福祉用具専門相談員の業務にあたることができます。
福祉用具専門相談員が関わる主な福祉用具

福祉用具専門相談員は、利用者の身体状況や生活環境に応じた適切な福祉用具を提案し、選定・提供します。福祉用具にはさまざまな種類があり、大きく分けると以下のようなものがあります。

移動を支援する福祉用具
高齢者や障がいを持つ方が安全に移動できるようサポートするための用具です。
移動支援の福祉用具
- 車いす(手動・電動):自力での移動が困難な方のための必須アイテム
- 歩行器・歩行車:バランスを崩しやすい方の移動をサポート
- 杖(T字杖・多点杖・ロフストランド杖など):歩行を補助し、転倒防止に役立つ
介護をサポートする福祉用具
介護する側の負担を軽減し、より快適なケアを実現するための用具です。
介護支援の福祉用具
- 介護ベッド(電動・手動):高さや角度を調整しやすく、利用者の自立や介護負担軽減につながる
- 床ずれ防止マットレス:長時間同じ姿勢でいることで発生する床ずれを防ぐ
- 移乗用具(スライディングボード・リフトなど):ベッドや車いすへの移乗を安全に行うための補助具
排泄・入浴を支援する福祉用具
高齢者や介護が必要な方が、できるだけ自立して日常生活を送るための用具です。
排泄支援の福祉用具
- ポータブルトイレ:ベッドのそばで排泄ができるようにするためのトイレ
- 入浴用椅子・浴槽用手すり:安全に入浴するためのサポート用具
- シャワーチェア・バスボード:入浴中の転倒を防ぎ、快適な姿勢を保つための補助具
日常生活をサポートする福祉用具
食事や着替えなど、日常生活のさまざまな動作を補助する用具もあります。
日常生活の福祉用具
- 食事用自助具(スプーン・フォーク・食器):握力が弱くなった方でも使いやすい形状のものが多い
- 衣類着脱補助具(ボタンエイド・靴べらなど):片手でも衣服の着脱がしやすくなるアイテム
- 介護用シューズ:歩行しやすく、転倒を防ぐための工夫が施された靴
住宅改修に関連する福祉用具
住環境の改善も福祉用具専門相談員の重要な仕事の一つです。
住宅関連の福祉用具
- 手すり(屋内・屋外):玄関や廊下、浴室などの転倒防止に有効
- 段差解消スロープ:車いすや歩行器をスムーズに使用できるようにする
- 滑り止めマット:転倒リスクのある場所で安全に歩行するための対策
福祉用具専門相談員の資格取得方法

福祉用具専門相談員として働くためには、特定の資格を取得する必要があります。この資格は、介護保険制度に基づく福祉用具貸与事業所や特定福祉用具販売事業所で働く際に必須となります。

未経験からでも取得できる?
福祉用具専門相談員の資格は、未経験者でも取得しやすい点が大きな魅力です。介護や福祉の現場での経験がなくても、指定講習会を受講し、修了すれば資格を取得できます。
- 受験資格が不要
- 国家資格とは異なり、学歴や実務経験などの要件がないため、誰でも受講できます。
- 短期間で取得可能
- 50時間以上の講習を受講することで資格を取得できるため、最短で1〜2週間程度で修了することも可能です。
- 試験がない
- 一定のカリキュラムを修了すれば資格を取得できるため、試験に合格する必要がありません。勉強が苦手な方でも、講習をしっかり受ければ問題なく修了できます。
福祉用具専門相談員のキャリアパスと将来性

福祉用具専門相談員の資格を取得すると、介護や福祉の現場を中心に多様な働き方が選べます。
定番の就職先は福祉用具の貸与・販売事業所ですが、メーカー勤務や施設内の専門職、さらには独立して活動するコンサルタントという道も。ここではそれぞれの選択肢について、業務内容や向いている人物像などをわかりやすく整理します。
福祉用具貸与・販売事業所での勤務
もっとも一般的なキャリアは、福祉用具貸与・販売事業所での勤務です。利用者との関係構築や用具の提案・調整を通して、実務的なスキルが磨かれます。
業務内容 | 特徴 |
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利用者へのヒアリング・現地調査 | 日常的な訪問を通じて利用者と密に関わる |
福祉用具の選定・提案・契約手続き | 生活状況に合った製品を提案し、導入をサポート |
点検・フォローアップ対応 | 長期的な利用を前提に、安心を支える |
直接利用者と向き合いたい方に向いており、日々の変化ややりがいを感じやすい環境です。
福祉用具メーカーでのキャリア
現場経験を製品開発や営業に活かしたい方には、メーカーでの勤務が適しています。福祉業界の知見を持った人材は重宝されます。
業務分野 | 具体的な仕事内容 |
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営業 | 介護施設や事業所への製品提案、デモンストレーション |
商品企画・開発 | 利用者視点に立った新製品の開発に関わる |
技術サポート | 導入後の使用支援や故障対応のアドバイス |
専門知識を武器に、業界全体の発展に貢献できる仕事です。
介護施設・在宅介護支援での活躍
施設や在宅支援の場では、福祉用具を用いた「日常生活の支援」が中心となります。継続的な関わりの中で、最適な環境づくりに寄与します。
- 施設内での用具選定・調整業務
↳複数の入居者に対応しながら、安全な生活環境を整える - 家族への説明や導入サポート
↳用具の正しい使い方や利点を丁寧に解説 - ケアチームとの連携
↳医師や看護師、理学療法士と協力して支援を展開
総合的なケアの一端を担う立場として、チーム医療にも深く関われる環境です。
独立・コンサルタントとしての道
一定の実務経験を積んだ後は、独立してコンサルタントとして活動することも可能です。柔軟な働き方を実現し、自身の専門性を活かす選択肢です。
主な業務スタイル | 内容 |
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地域密着型支援 | 個人宅や地域包括支援センターと連携し、用具選定や改善提案を実施 |
法人・自治体向けアドバイザー | 制度設計やサービス改善のアドバイスを提供 |
研修・講演活動 | 後進育成や市民啓発のための講義やセミナーに登壇 |
自由度が高く、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる一方で、専門性の継続的な更新も求められます。
まとめ|福祉用具専門相談員になるために
この記事では、福祉用具専門相談員としてのキャリアを築くために必要な情報を、資格取得の方法から仕事内容、さらには将来的な働き方まで網羅的に解説しました。指定講習を受講することで誰でもチャレンジ可能な資格であり、現場で求められる知識やスキルも、丁寧に準備すれば習得できます。
福祉用具専門相談員は、高齢化社会の中でますます求められる存在です。実際の仕事は利用者の生活の質に直結し、多くの感謝ややりがいを得られる反面、専門性や責任も伴います。しかし、それゆえにこの仕事を通して得られる経験や成長は非常に大きいと言えるでしょう。
これから資格取得を目指す方は、まず講習の情報を調べ、受講スケジュールを計画することから始めましょう。そして、学びながら現場のイメージを膨らませ、将来どのような働き方をしたいか、自分なりのビジョンを描いてみてください。